刺激のある恋に慣れてしまった彼女の婚活:第七話~最終話~
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結婚相談所を運営していると、
「幸せになりたい」という言葉の重さが、
人によってずいぶん違うことに気づかされます。
これは、私たち相談所の現場で実際にあった、
ある女性の婚活エピソードです。
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第七話:前に進むと言うこと
優しさに包まれた恋が、彼女には苦しく、
そして、その苦しさを言葉にするのもまた苦しかった。
仮交際終了からまもなく、
彼女から退会したいとの申し出がありました。
「結婚相談所にいる方って、みんな “良い人” ばかりですね。
……でも、私はまだその優しさに慣れないみたいです。」
——39歳。
くしくも、彼女の誕生日。
退会という決断。
それは、逃げではなく──立ち止まる勇気でした。
このまま相談所の婚活を続けていたら、
またあの頃の恋を、自分が選んでしまうのではないか。
——それが、彼女の胸に芽生えた怖さでした。
「優しい恋が物足りないのかもしれない。
でも、本当はもう、あんな恋は望んでいない。」
その矛盾のあいだで揺れながら、
彼女はただ、立ち止まることを選びました。
私は、その気持ちを受け止めました。
引き止めたい気持ちはありました。
けれど、背中を押さなければいけない時もあります。
「また、話したくなったら連絡くださいね」
それだけ伝えて、一度、距離を置きました。
——そして、2年。
彼女はもうすぐ41歳になります。
退会してからも、不思議と月に一度だけ
彼女から電話がかかってきます。
「まだ誰かを選べていません」
彼女はそう言います。
少し臆病になっているのかもしれません。
でも、ひとつだけ確かなことがあります。
——もうあの頃の恋には戻らない。
暴言も、怒鳴り声も、涙で繋ぎとめる恋も。
その恋を閉じるために、
彼女は、相談所を離れたのです。
そして、彼女と半年に一度だけ、
今でも一緒に行く場所があります。
イタリアンレストラン「トラットリア・グラッパ」
《報告会》と名づけられたその時間は、
彼女にとって解放の場所であり、
私にとっては、彼女を見守るための時間。
カルボナーラを前にして
飲んで、笑って、悩んで、また笑う。
その姿は
「婚活中の女性」ではなく
ただひとりの
「今を生きるひと」。
***
人生は、結婚できたかどうかで完結するものではありません。
立ち止まる日も、休む時間も、
すべて前に進むための一部です。
彼女は、まだ理想の形を見つけていません。
でも、探すことをやめていません。
——この話はここで終わりますが
彼女の人生は、これからも続いていきます。
最後に、彼女が言った言葉だけ残します。
「いつか旦那も一緒に。」
その未来は、きっとまだ物語の途中。
私はずっとその日を待っている。
刺激のある恋に慣れてしまった彼女の婚活~終わり~
